自転車の旅に熱心な層は、特に四十代から上の年齢層であることも判明しています。まもなく団塊の世代は定年に達することになりますが、そのエネルギーを地域づくりに活かしてゆくためには、自転車によるツーリズムのガイドやボランティアスタッフがひとつの大きな受け皿となるでしょう。さらに、自転車の旅には価値の転換があります。峠道の困難な上りも、逆にそれゆえに自転車の旅人には感動を増幅してくれる素晴らしき舞台であり、都市の名もない静かな裏道も、田舎道でおばあちゃんと交わした会話も、無限と言って良い価値を持ちます。
畢竟、自転車で愉しめる旅とは、道そのものを主題とする旅にほかならないのであって、その意味でも、古の物流の道であり、同時に信仰の道、秋葉街道であり、文化の伝播する歴史的な道でもあった「南塩の道」を、身体性と精神性と物質文明のバランスした21世紀的な乗り物である“自転車”で旅をする意義は、非常に大きいと確信します。